<<検証>> 本年4月から新番組制度が実施され、競争得点も「固有点持込方式」から「概定番組貼り付け方式」に 変更されました。 しかし、この概定レース平均点の、S級とA級の相対的な関係がうまく設定できて なかったようです。 期毎のS級,A級入れ替えが、従来の「点数序列を基にした割り振り」から、「S 級下位とA級上位の200名強制入れ替え」になったために、制度的には概定レース平均点の設定不具合が特に 問題にはならないのですが、我々ファンにとっては、期初の昇級,降級選手の脚力の見極めが競争得点で はできなくなりました。 この8月から、A級のレース平均点が一律4点加算され、だいぶ改善されるようですが、はたして、 この"4点"という値が妥当なものかを検証してみることにしました。 下の Graph_1 は、4月〜7月に 18走以上 出走した全選手(3784人)の平均競争得点の度数分布図で、 横軸は平均競争得点、縦軸は選手数(人)を示しています。紺色の線はA級選手(2976人)の分布、 ピンクはS級選手(808人)の分布です。 この図からもわかるように、明らかにA級の点数設定とS級の点数設定の差が大きすぎるようです。 そして、その差はA級戦の設定点数を4点上げた程度では解消できないようです。 |
Graph_1 : H14.4月〜7月 の 全選手の平均競争得点分布 |
<<分析>> では、4点ではなく、A級戦の設定点数を何点上げれば妥当な値となるのかを見積もってみましょう。 見積もるデータとして、旧制度(H13.12月〜H14.3月)でA級1班だった選手の旧制度での点数分布と 新制度での点数分布を用いてみます。 下図 Graph_2 は、H13.12月〜H14.3月にA級1班だった選手で18走以上出走し、かつ新制度のH14.4月〜7月に も18走以上出走した514人の、H13.12月〜H14.3月の平均競争得点の度数分布表です。赤線が、全514人の分布で、 紺線は 514人のうち新制度でもA級の190人の分布、ピンク線は 514人のうち新制度ではS級となる324人の分布です。 Graph_3 は、前述の旧制度でA1だった514人の新制度(H14.4月〜H14.7月)での競争得点の度数分布表です。 紺線は 新制度でもA級選手190人の分布、ピンク線は 新制度ではS級選手 324人の分布です。 Graph_2 の紺線とピンク線の選手の分布関係が、Grapth_3 では大きくくずれており、 あきらかに、新制度でもA級の選手の分布が、S級の選手の分布より低すぎることがわかります。 Graph_3の紺線とピンク線の分布関係を Graph_2の紺線とピンク線の分布関係に近づけるために、 次のように修正してみます。
[ Graph_2 の (x2 - x1)/σ2 ] = [ Graph_3 の (x2 - x1)/σ2 ] −−− (1) となるように、Graph_3 の 紺線の分布を全体的に移動する。 具体的にパラメータを算出すると、
このように紺線を11.47点並行移動させた、修正版Graph_3 を、下の Graph_4 に示します。 かなり乱暴な方法での修正ですが、どうでしょう、かなり自然な分布となっていると思います。 <<結論>> 8月から、A級戦のレース平均得点が4点加算されますが、A級選手とS級選手の競争得点での脚力比較を行うには、 A級選手の得点には、さらに約7.5点を加算(または、S級選手の得点から 約7.5点を減算)して比較する必要があるようです。 <<補足>> Graph_2 のピンク線、および Graph_3 の紺線の分布は、山の右辺(点数上位側)の斜面が急に なりすぎているようですが、これは、A級戦得点制度の上位側の端で戦っているため、本来は、もっと高い点数を取れる選手も、 得点制度の上限以上の点数がもらえないため、点数が抑えられてしまうことになることが原因と思われます。 (つまり、同じ級内で、もっと上位クラスのレースがあれば、もっと高い平均競争得点を得られると思われる。) したがって、本来、このへんの補正を行ってから分析したほうが良いのでしょうが、今回は省きました。 電子競輪新聞の能力値のほうでは、8月6日分から、この辺も考慮して、計算式を見直し、降級,昇級選手の 能力値も適正に判断できるようにしました。 |
Graph_2 : H13.12月〜H14.3月 の A1選手の平均競争得点分布 |
Graph_3 : 旧A1選手のH14.4月〜H14.7月 の平均競争得点分布 |
Graph_4 : 修正版、旧A1選手の新制度での平均競争得点分布 |